お茶は昔から不老長寿の仙薬とされてきた

中国雲南省が原産地とされるお茶は、かなり古い時代から飲用に用いられていたようです。 最初、お茶は医薬品として用いられていました。

嗜好品としても飲まれるようになったのは、中国の唐の時代(七ー九世紀)です。陸羽という人が著した『茶経』という当時の本は、お茶の製法から、飲み方、薬効に至るまでのお茶の知識の集大成といえます。

わが国にお茶がもたらされたのは、奈良時代のことでした。遣唐使や留学僧が中国からもちかえって、寺院の境内でも栽培されるようになったのです。このときは医薬品として用いられるのが主でした。 平安時代の終わりごろになって、臨済宗を始めた憎・栄西が『茶経』を中国から持ち帰り、『喫茶養生記』として日本人に紹介し、同時にお茶の習慣を伝えたのです。 鎌倉時代になってから、武士や禅僧の間で喫茶の風習がひろまりました。

そのころはまだ、粉末にしたものにお湯を注ぐ、抹茶でしたが、江戸時代中期になって煎茶が普及して、急速に喫茶の習慣が一般にも広まり、国民的飲料となったのです。 薬として用いられていたころの中国の古典では、

「主として、はれもの、膀胱の痛み、胸の熱、渇きをいやし、眼けを覚まし、心身を元気づける」
とお茶の薬効について書いています。

さらに、「お茶の繁茂している所は、きわめて清く、尊い土地であるから、ここでとれたお茶は、不老長寿の薬効を持ち、昔から珍重されている仙薬である」とも述べられているのです。

現実に日本でも、お茶の産地では平均寿命が長いのです。私の住んでいる静岡県は、お茶の生産では日本一、全国の生産高の半分以上を占めています。また、お茶の消費量でも日本一です。この静岡県の平均死亡年齢を見てみると、70.4才で、全国平均の68.2才にくらべて、かなり高いことがわかります。 そのほか、お茶の生産の多い県である、三重県、鹿児島県にしても、全国平均より高く、お茶の不老長寿の効果がうかがわれます。さらに目立つのは、ガンの死亡率の低いことです。 この三県ともガンによる死亡率が全国平均を下回っています。

ガンのうち胃ガンだけについてみると、静岡県は全国平均をやや下回るだけなのですが、静岡市以西のお 茶の生産地では、胃ガンによる死亡率が全国平均の二分の一から三分の一という市町村が多いのです。また、脳卒中による死亡率も、その地域ではかなり低いことがわかっています。 お茶の産地の気候が比較的温暖であることが、寿命を延ばしているという面もあるかも知れません。
しかし、いいお茶がとれるのは、単に温暖なだけではなく、冬や夜にはかなり気温が下がる、気候の厳しい山間部なのです。そういう厳しい気候の地域で生活している 人たちも、やはりガンや脳卒中が少なく、比較的長寿なのです。人間もお茶も同じで、平穏なだけではなく、どこかに厳しい面が必要なのかも知れません。 お茶に含まれるさまざまな成分が不老長寿に役立つでは、どうしてお茶が不老長寿に役立つのでしょうか。

お茶のさまざまな薬効についての、科学的研究が始まったのは、二〇世紀に入ってからです。分析の結果、お湯の中にとけ出しているお茶の成分には、タンニン、カフェイン、ビタミンCなどが含まれていて、抹茶のようなかたちでお茶そのものをとれば、ビタミンAや食物繊維も含まれていることがわかりました。

 

タンニンは、胃腸の運動を盛んにして消化液の分泌を高めますから、食べた物の消化吸収をよくして、食欲増進の効果があります。また、重金属と結びついてその害をなくすとか、タンパク質を凝固させる働きによって食中毒を防ぐなどの作用がタンニンにはあります。また最近の研究では、夕ンニンに細胞の突然変異を抑制する作用があることがわかり、それによってガンの発生が予防されるものと期待されています。
カフェインは中枢神経を刺激して興奮を高め、頭をすっぎりさせます。強心作用もあり、血液循環を高めますから、尿の出(利尿作用)もよくします。
ビタミンAやCは、栄養として補給できますが、これには、感染症を防ぐ、ガン予防に効果がある、ストレスに強くなるなどの効果が、最近の研究でいわれています。 このほかのビタミンやミネラル、サポニンなどいろいろの成分が含まれていて、いろいろと有効な作用のあることがわかっています。こうしたいろいろな成分の総合作用で、そして、徴量であっても毎日飲むことによって蓄積するので、健康増進や病気の予防に役立つものと思われます。
お茶は曙好品としてもおいしく、それでいていろいろな効用も期待できる、たいへんにありがたい飲み物であるといえましょう。
<研修会資料より抜粋>
 

 

 

 

 


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