前回では急須の茶コシ部分、アミ(網)について考え、お勧めは金属製のアミでしかもフッソ加工された ものが使いやすいと述べたが、ここで当店で約半年余り使用した同じサイズ同じ形の急須をみてみよう。
写真左上は普通のステンレス製の網、写真右下はフッソ加工された網である。
上の急須のアミに茶シブがついて茶色に汚れているのがわかりますか?、そして下の急須のフッソ網
は明らかに茶シブ汚れはないのが解ると思います。この二つの急須は使用頻度は同じで、水洗いだけで頑張って
きましたが結果はご覧の通りです。茶シブがつくとアミの目が狭くなるのでお茶が詰まりやすくなり
また異臭もしてくるので衛生上もよくありません。
私自身もこの様な顕著な結果がでるとは思っていませんでしたので驚いています。ちなみに、
ここで試験したフッソ網の急須はご注文のページの美味しく入れられる急須です。
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ひとつの急須を店で使用した「急須のアミ」です。 ブラシ類を使用せず水洗いだけですとこのように内側や上部に茶渋、ヘドロ状のものが付着しお茶がまずくなるばかりではなく衛生上良くありません。是非とも定期的にブラシ類で掃除をし、またアミを外して綺麗にしましょう。 ※急須の掃除はこちらです。 |
帯状のアミでは重なった部分に茶葉が堆積し異臭の元となる可能性が多い(お客様が持ち込んだ帯びアミを取り外した箇所) |
帯状の茶コシは取り外しと取り付けが困難なため日頃の手入れに時間がかかる、また左図のようにアミが重なった部分に茶葉が徐々に溜まってカビくさいにおいが発生するので注意したい、たぶんブラシなどで強く擦って全体的に緩くなってしまったと考えられる(この部分の掃除はアミをはずさない限り不可能) |
それでは、前回(その3)の課題であったアミの形、『カゴ型と板型』はどちらが使いやすいか、考えてみよう。
よく『カゴ型のアミはお茶の葉は捨てやすいけど美味しくでない』とお客様から言われ自分でも試した所
やはり味、色とも板型の急須で入れたものとは差があることがわかった。やはり板型のものの方が美味しい
のである。でもなぜなんだろう?
当然お茶の量、お湯の温度、お湯の量、抽出時間もおなじで試験したのに何故なのだろう。
答えは以外なところにあった
次の写真を見て欲しい
左は板型網を代表して<平板網>、右は<カゴ網>、それぞれ茶10gをいれ100ccのお湯を急須に注ぎ20秒間抽出
し煎茶茶碗に注いだ結果である。平板網の急須で出した煎茶茶碗の茶の色に比べカゴ網で出した
茶の色は薄いのがおわかり頂けると思う、飲んでもカゴ網急須は薄く味気ない。
この差は中に入れてあるカゴ網の高さに起因する。つまりこのカゴ網急須は急須の底に網の底が
着いていないため(右の写真の様に約2センチ底から離れている)100ccのお湯の量では
ただ通り過ぎるだけで茶葉のレベルまでお湯が浸らないのである。
これでは美味しくでないはずだ、ではお湯の量を2倍に増やしカゴ網急須の茶葉も十分浸るように してみたらどうだろうか?。結果は前回よりも美味しくでるものの平板網にはかなわない、これは カゴ網の狭い部屋で茶葉が十分に開ききれないためであろうと思われる。
また、『美味しいお茶』とはお茶の葉の微粒子が茶碗の中にある程度入ることにより味も、色も よくなると考えられる。 (だから陶器製のアミは穴が大きいので茶葉の粒子が出やすく美味しいでるのだ!) 本当かどうか試しに極端ではあるがお茶をコーヒーフィルターで入れてみて欲しい、きれいな澄んだ 薄い色になって出るが茶独自の緑色も味も出ず飲みたくなくなるはずだ。
では、平板網急須とカゴ網急須では茶葉の粒子はどのような差があるのであろうか、先程の200cc
入れた急須の中身を全部、紙フィルターでろ過してみた(左の写真)、やはり粒子がカゴ網(右側)は少ない
のがおわかり頂けると思う。これを乾燥して重量を計ってみたがやはり粒子が多い左側の方が重かった。 この差が美味しく出る出ないの差である。
平板網急須はカゴがないためお湯を上から注いだ時に茶葉が自由に急須のなかで踊れるので上手く 抽出できるのあろう。また『秘伝美味しい入れ方』の項目にも記して在るとおり急須を2,3回 位回すと濃度が均一になり色も良く出て美味しくなるが、今回使用したカゴ網急須では 急須を2,3回、まわしても急須の中心部に茶葉があるためと茶葉で邪魔されて中のお湯が上手く まわらない様である。紅茶の入れ方で重要な『ジャンピング』の様な現象が急須でもある程度 必要なようである。